Vol.5 嫌なとこがないデザイン with安東孝一さん
2023年10月27日
今回のエピソードは「手帳」についてのお話です。
私が先日購入した2024年の手帳、今回はその手帳をプロデュースしている「アンドーギャラリー」の安東さんがゲストに来てくださいました。
先日の1人会議へのコメントにお返事
皆さんお元気でしょうか。
こちら八ヶ岳。今週初霜がおりました。
まだ頑張って薪ストーブつけてないんです。燃料の薪、薪割り大変だからね。
でも灯油も高いからそろそろかなと思ったり。
あと動物たちが冬眠する前だからか、キツネとか鷹とかが鶏のヒナを襲いに来てて、今朝も朝から大騒ぎで。 鶏って危険が迫るとみんなで警戒音出すんです。 はい、そんな近況です。
では、先日の1人会議の回に寄せてくださったコメントをまず読ませていただきますね。
ほんとありがとうございます。
東京都Kさんより
ちかさんのメルカリの話。
次の人に渡す、捨てずに循環できるってところにお金以外の価値があるのかなと思っています。
自分はもう使わないけど、捨てるには忍びない。次に使っている人がいることで、ゴミにしてしまう罪悪感が減らせるから。いちリスナーとしての感想でした!
もうね、ほんとだよね。
確かにそこだよね。やっぱ。
正直私あの時、お金〜!って思って、なんかそんなこと言ったんだと思うの。恥ずかしい。改めます。
ゴミにならないっていうことだよね。もうみんな詰まるとこお金じゃん!みたいに言ってたけど、恥ずかしいね。
もう1つ読みます。
岐阜県しんちゃんママさん
先日の回、豆知識が面白かったです。1人で声に出して笑っちゃいました。 なんだか10月になり、年末感が出てきましたね。 ちかさんはおせちとか作るんですか? あとおひつ、とっても欲しいです。 どうかよろしくお願いします。
しんちゃんママさんへおひつ送ります!
おせちね、私作らないんです。買います。
去年はオイシックスのおせちを買ったかな。
でもお正月の料理で絶対作るのが、エビの煮物みたいな、エビだけをお醤油でさっと煮る、ちょっとお砂糖入れるかな。
家族みんな好きだし、作りますね。
あとおせち、今年どうしようかなって考えてて、まだまだ悩んでて。
この時期早割とかあるからいろんなサイト見てますけど。
あと、お雑煮ぐらいは作るけどお煮しめと。
おせちは全然作らないです(笑)。
さてさて、今回のエピソードは「手帳」についてのお話です。
皆さんは手帳、スケジュール管理とかどうしてますかね。
私は書くのが好きなので、手帳とGoogleカレンダーと両方使いでやっています。
2024年の手帳は先日リリースされた、アートディレクターの葛西薫さんのデザインの手帳を購入しました。
その手帳はアンドーギャラリーというところがプロデュースしているもので、来年の手帳買った!ってTwitterで書いたら、なんとその手帳の仕掛け人のアンドーギャラリーの安東さんからご連絡があり、今日のゲストで来てくださいました。
リスナーさんへの手帳のプレゼントも安東さんからいただきましたので、最後までぜひお聞きください。ではでは、どうぞ。
初対面はヤクザが来たと思った(笑)
ようこそ、長野に。
すごくいいとこですね、ここ。
皆さん、安東孝一さんがどんな方かっていうの、多分ご存じない方もいらっしゃるので、私から見た安東さんを。
清住白河時代にお会いしましたね。
初めて会ったのすごい強烈で覚えてるんですけど。
僕は忘れたね(笑)。
私が清隅白河に引っ越した時に、アトリエショップって週に1回だけ(アトリエ兼住居で)お店をしてた時に、安東さんがいらっしゃったんですよね。ガラッと。
それで私、ヤクザが来た!と思ったんですよ、その時。
まあね、よく言われるからね。
高そうなスーツを着て、隣にすっごい綺麗な女の人がいて。
なんか銀座のママを連れたヤクザが来たって、ほんと思ったんですよね。
あ、この人、すんごい買い物してくれるかもしれない(笑)。
冗談ですけど、最初はそういう印象でした。
確か来るなり「俺が安東だ!」みたいな話をね、されたんですよ。
どんな人だろうと思って2、3分喋ってたら、見た目とのギャップにびっくりしたというか。
もちろんアンドーギャラリーは伺ったことがあったし、お店に来てくださって、お会いできて素直に嬉しかったです。
アンドギャラリーを10何年やってた?
15年。
15年、青山から清澄白館に引っ越して。
清澄白河での2度目のギャラリーなんですけど、オープンが2008年の7月。
実は今年2023年の5月に閉廊しました。
その話はまた後からしますけど、15年間、清澄白河で現代美術のギャラリーをしてました。
現代美術っていうのは、つまりなんでしょうか。
そんな難しいところから入るの??(笑)
そういう話をした時が、安東さんのお人柄が見えたんですよ。
わざと飲みの席で「アートってなんですかね」って言ったら、「俺にもわからん!」って言うんですよね。
そうおっしゃって、安東さんはちょっと独特のキャラクターがあって、今回ラジオで何をお話しようかなと思った時に、高田純次の話思い出して。
嫌われるおじさんの3つが、自慢話・過去の話、お説教だ。
安東さん、お説教はあんまり人にしないですよね。
自慢話ばっかりだから、100%自慢話だから、お説教してる時間がないんです。もったいない。
ちょっとちゃんと話しましょうね。
1954年宮城県生まれ、1984年にアンドーギャラリーを設立。
これすごいと思ったんですけど、私81年生まれなんですよ。
私が3歳の時にアンドーギャラリーを設立されてるんです。
それは青山にあったんですよ。
もう1年と1か月しかなかったんですけど、7人の作家の個展をして、とってもいい展覧会をして。
後になってみると、そこには倉俣史朗さんとか三宅一生さんとか横尾忠則さんとか磯崎新さん、作品買ってくれたりとか。
本当に1984年、骨董通りのところに高さが3メートルの50坪のギャラリーをホワイトキューブ作ったんですけど、たぶん日本でそういう現代美術のギャラリースペースがなかったので、いろんな人が来てくれて、ものすごく話題になった。
いいカレンダーが見つけられなかったから作った
クラスカのOIL MAGAZINEっていうサイトで、安東さんのお話がとっても興味深く拝見させてもらったんですけど、ぜひ読んでいただきたい。
安東さんとはこういうことをしてきてこんな人だよっていうのがすごく、私が説明するよりも読めると思うので、ぜひそちらをご覧いただきたいです。
今日お話ししたかったのは、アンドーギャラリーはプロダクトも作っているよっていうところをお伺いしたいんですけど。
まず、葛西薫さんのカレンダーがもう20年近くなんですよね。
22年ぐらいになります。
もう20年過ぎたんですね。
これは本当にいろんなところで目にするなと思っていて、ジャスパ・モリソンのアンドーズグラス。
で、今回お話したかった、アンドーギャラリーダイアリーですね。
私買わせていただきまして、赤を買いました。
どうもありがとうございます。
現代美術のギャラリーやってる人がどうしてオリジナルプロダクトを作ってるのかなっていうのは、わからないと思うので、ちょっと今、ダイアリーで3つ目なんですけど、1つ目の葛西さんにデザインしてもらったアンドーギャラリーカレンダーの話をちょっとさせてください。
このカレンダーが生まれたのは、グラフィックデザイナーの人に、そこで贈答用に作ってる線4本だけ入ったシンプルなカレンダーをずっともらってたんですよ。
ある時もらえなくなって困ってしまって自分自身が、市販のカレンダーを買いに行くんですが、なかなかいいのを見つけられなくて。
先ほど紹介してもらったように、安東さん口が悪いんで(笑)口悪く言うと、みんなデザインが素晴らしいものもあるんだけど、デザイナーがこう表現したい!みたいなところが見えてくると嫌だなみたいな。
仕事も今40年もやってるわけだから、こう見るとすぐ作った人の気持ちとか思いとか見えちゃうんだよね。
見えなければもうちょっと楽なんだけど、そうするとここ惜しいとかここ嫌だなとか、1つも選べなくて。
本当に困り果てて葛西さんに1月にかな、電話して、葛西さんもいいデザインのカレンダーがないので、自分でデザインしてプリントアウトして使ってるっていうので、じゃあ一緒に作りましょうっていうことで。
だから初めから商品作ってやろうって気はなくて、本当に自分が事務所に使うカレンダー、葛西さんも自分で使うっていう、そういうことで作ったんです。
ただ見積もり取ったらものすごい高いお金で、贈答用にうちのお金で作ってみんなにばらまくっていうような費用感じゃないので、これはまずいっていうことで。
作ることは決めてたんだけど、販売しようということになって販売始めて、それがカレンダーの始まりで。
グラスは、2014年からジャスパー・モリソンにデザインしていただいて発売してるんですが、葛西さんが講演会した時にジャスパー・モリソンが来てて。
僕は実はカレンダー作った後に、2個目をグラスが欲しいと、グラスを作ろうとしてたんですよ。
実際ジャスパー・モリソンにお願いしようとして、ジャスパー・モリソン知ってる人に資料を渡したんだけど届かなくて、1回ダメになってて。
2002年にカレンダー作って、たぶんもう2003年ぐらいに、1個作ると2個目作りたくなるでしょ、人間って。
カレンダーは本当に事務所にかけるためなんだけど、今度2個目作るときアイテム何にしようって考えるじゃない?
そこものすごく難しくて、世の中商品っていっぱいあるわけでしょ。
だけど僕がやりたかったのは日常的なもの、もう本当に身の回りにあるもの、どの家にでもあるものっていう、そういうアイテムがいいなと思って。
家をこう見渡すと、もうグラスしか思いつかなくて。
牛乳も飲むし、水も飲むし、ビールも飲むし、みたいな、どの家でもグラスはあるよなっていう。
じゃあグラスっていこうと。
それで、ジャスパー・モリソンの家具を見たことがあって、すごくシンプルなんだけど使い心地がいい椅子だった、座り心地がいい椅子だったんだよね。
あ、このデザイナーいいなと思って、じゃあグラスはジャスパー・モリソンに頼もうっていうことで、先ほど言ったように知人に繋いでもらうようにしたんだけどダメで。
ずっと諦めてたら葛西さんの講演会で出会って、お願いして作ってもらった。
それでもう1つ、今年22年ぶりに葛西さんのデザインのアンドーギャラリーダイアリーが発売になって、これでうちのプロダクトは3個になる。
ちょっと長い話だったけど、そういう流れなんです。
昔聞いたお話今思い出したんですけど、ジャスパーさんに依頼してたんだけどずっとお返事がなくて、しばらくしてからある日1枚だけデッサンの線画が送られてきたって。
合ってます?このお話。
うん、合ってる。
クラスカで葛西さんが講演会した時に、僕はカレンダーを運んだタイミングで、ジャスパーにデザインお願いして、今度ギャラリー行くよっていう話はもらってたんだけど、半年も来ないわけ。
大人ってみんなそうだよなって、僕は子供だから行くって言ったら来るんだろうなと思って(笑)、待てども待てども来ないんで。
僕もプロデュースもしてるんで、ジャスパー・モリソンが世界的なデザイナーで一流のメーカーのものしか作らないってことは僕も知ってたんで、当然うちのやるわけがないってことは分かってた。
分かってアプローチしてて、だけどはっきりさせたくて直接事務所に電話して、デザインをお願いしたいって!
そしたらジャスパー・モリソンと熊野さんっていうスタッフが門前仲町に東京事務所があったから、うちが清澄白河だから自転車20分ぐらいかな、自転車2台ですぐ来て、ギャラリーに。
そうなんですか。
自転車で来たの、2人(笑)。
それで一生懸命お願いして、デザインをじゃあ考えるって言って、やっぱりそこから半年ぐらい何も来ないんで、いろんな人に話したら「考えるっていうことはやらないってことだから」って。
大人ってそういう社会なのかなと思って、僕は子供だから考えるっていうことはやると思いますよって言ったんだけど、みんなに聞くと「それは社交辞令で、考えるっていうのはやらないってことだから」ってみんなが言うわけです。
そしたらジャスパーのアドレスから僕のアドレスに直接メールが来て「色々デザイン、ドローイングをいっぱい描きました。これがベストです」って言って、ドローイングが1枚描いたものをメールで送ってきたの。
それは寸法も書いてないし何も書いてない。
ただドローイングが1枚だから、わかんないよね、わかんないと思うんだけど、僕はどうしてもやりたかったから「これでやります」ってメール送って、それで形になっていくっていうそういうこと。
私、両方使わせてもらって、低い方が好きで。
でも、もう10個ぐらい買ったと思いますよ。割れましたよ(笑)。
えええ!!普通、割らないけど!
私ね、子供たちにも使わせるんですよ。使ってほしくて。
1年間ニューヨークで体験した「モダン」が原点
さっきも途中で質問しようと思ったんだけど、たかがカレンダーといえばカレンダーっていうところに、こだわりっていうかその一言で片付けたくないんですけど、家に飾るカレンダー、もらうカレンダーもあるし。
でも、やっぱりその重要度が高いんですよね、安東さんにとっては。
その嫌なものを自分の毎日目に入るところに置きたくないっていう感じって、安東さんの核みたいなところがあるんですか?
いや、職業病だと思う。
僕はデザインのビジネスをしてるのでデザイン批判的になっちゃうかもしれないけど、デザイナーってやっぱデザインしてお金をいただくわけだよね。表現して。
だけどデザインしすぎると、すごく嫌なものに見えてくるっていうか。
それが見えちゃうわけですよね、いっぱい見てるわけだから。
そうすると嫌だなっていうか、なかなか選べないっていうか、そういうことになっちゃうのかな。
いっぱい物がある中で、プチプライスでも素敵なものとかあったりするけど、安東さんって絶対そっちには興味が全くないじゃないですか。
例えばおみやげ屋さんで100円とかで「あ、これ可愛い」とか私結構好きなんですけど、カレンダーもデザイナーとかじゃなくて、安くて可愛いみたいなのは全然興味がなくて。
なんて言えばいいかな、「美」であると同時に「超プロ」みたいな緊張感みたいなのがアンドーギャラリーに行っても感じるし。
難しい話になっちゃうんだけど、やっぱり僕が30歳で東京に出てきて、ギャラリーをやると同時にギャラリーは1年で閉じちゃったから、アート・建築・デザインのプロデュースを清澄白河の2008年まで、23年ずっとそれで食べてたんだよね。
やっぱりなんていうのかな、一言で言うと「モダン」っていうものに対しての憧れみたいな。
僕は高卒で美大も行ってないでしょ。
あんまり本読むのも勉強するのも好きじゃないから、ベースになってるのは話が遡っちゃうけど、僕は18歳で高校降りて父の会社に入って、20歳で社長になって20歳で結婚して、26歳までに4人子供がいる。
だけど父の会社を辞めて違うことやりたいっていうことで、画商・ギャラリーを目指すんだけど、専門の教育受けてないわけだから、美大に行ってないってことで。
やっぱ勉強しないといけないだろうなっていうことで、机上で勉強すんの嫌いだからもう世界中のもの見ればいいだろうと、フットワークはあるので。
だから世界中3年ぐらい回って、世界の古いものから新しいものまで全部見ちゃおうみたいな。
パリから行こうとしたら友人にニューヨークだよ今はって、1982年の話で、まぁニューヨークから行こうっていうことで。
そのあと3ヶ月ぐらいヨーロッパは回るんだけど、1年間ぐらいニューヨークに住んでギャラリーとか美術館とか博物館とかも回って、でももう40年この仕事やってきてるんだけど、その時の1年間のもう死ぬ思いで見た経験、ニューヨークで見たいろんなもの、それからニューヨークの建物も含めて、演劇なんかもそうだし、色々なものをそこで体験したっていう、それがベースになってるんだと思う。
やっぱり一生懸命「いいものってなんだろう?」とか「本物ってなんだろう?」みたいな話を、27歳だったんだけどわけわかんなくて、何しろ頑張ってもがいて吸収しようとしてて、やっぱそれなのかもしれないな。
やっぱりこう「モダン」「現代」っていうのかな、そういうものばっかり見たせいで、こんな人間になっちゃったのかもしれない。40年そういうことになっちゃったのかもしれない(笑)。
でも、本物とか本質的なものっていうところって大事ですよね。
今いろんな物が溢れ返ってるから、何を選ぶかっていうところで。ありがとうございます。
あと、私も本がずっと読めなかったんですよ。
読みたくても読めなくて、文字が入ってこなくて。
20歳の時に初めて本が読めるようになってきたんですけど、でも読まないとかおっしゃりながらもこの前、インタビュー読んでて、ソクラテスの話とか三島由紀夫の話とか、安東さんのそういう側面もあるんだなっていうのを思ったんですよね、文学的な。
いや、本当に数は少ない。数は少ないし遅い。
その文字が読めないってこれは本当に笑えない話なんだけど、小学校3、4年はマガジンとかジャンプの全盛時代だから、みんな漫画、週刊の買ってみんな読んで会話してるんだけど、僕も買ったことあるんだけど、読むのが遅いから意味がわからない。
スピード感がないとストーリーになっていかないでしょ。
だからもう1回か2回買って読めなかったから、ジャンプ・マガジン買わなかった。
漫画もだったんですね。ビジュアルがついてて文字が入っても。
いやいや、文字読んでるともう絵は見えないでしょ。
だから本当にちょっと頭が悪いっていうことなのかもしれない。
でもそういう安東少年が、今の安東さんをこう作り上げてるのかもですね。
言葉で確かめないっていうか、衝動とかファーストインプレッションで「よしいく!」「やらない!」みたいな判断がめちゃくちゃ早いですよね。
スパって、こうものもおっしゃる(笑)。
それなんかきれいに言ってるけど…(笑)。
この間その話で言うと、10年ぐらい大企業の人で仕事いただいてるクライアントと、よく飲んだり仕事はいただいてたりしてるんだけど、本音で「僕ってどう?」て聞いたわけですよ。
よくそんな質問しますよね(笑)、いろんな人に。
第一印象とか口当たりがいいとか、そういうのを拒絶してるのかもしれない
いつも前は「安東さんってものの考え方がシンプルだからいいですね」って言われたことがあって、「え、シンプルって、それ単細胞って悪い意味ですか?」って。
「いや、そうじゃなくて、物事っていろんな条件があるじゃない?それをなかなかこう整理できないで出してしまうっていうケースが多いじゃない?それを安東さんはわーってあるのにこれだ!みたいな話をするから、シンプルにものを考えられるとか、アウトプットできるっていうことを褒めてるんだよ」という話をしてくれて、その人にこう悪く言われたことがない。
だけど「もう今日は思い切って言ってください!」マウントしてください」って強くお願いしたら、「安東さんって第一印象悪いですよね」って。
「その次が口悪いですね」って、10年一緒に仕事してきてご飯もいっぱい食べたのに、えー!!!みたいな(笑)。
いや、でもそれ言われてそうだよなーって僕としては納得した。
だから今日チカさんにも同じことを冒頭で言われてるなみたいな。
私、ほんと失礼ですよね、こんな大先輩に。
いやいやいや。
でも不思議なのがそういう第一印象が悪くても、ごめんなさいね、失礼で本当に。
でもみんな安東さんとまた会ってたり、安東さんに結局惹き込まれて一緒にお仕事したりとか、やっぱり長いじゃないですか、皆さんと。
やっぱり人によってはなんか距離置きたいっていう人もいるかもしれないんですけど、やっぱり安東さんのその不思議な魅力があるんだなーと。
意外とガンガン言ってる割に打たれ弱いタイプ。
そうですね、それ知ってる(笑)。
大体ガンガン言ってる人は、比較的打たれると慣れてないせいか傷つく。
だけどその安東さんのそういうところをみんなにバラすじゃないですか。
「俺、実はさ、もう元気なくてさ」とか、清澄のみんな結構そこも知ってましたよね。
だからみんなでコーヒー飲んだりお酒飲んだりして、強いほうばっかり「イケイケ!オレオレ!安東さん」だけじゃないところ、みんながそこを分かってたから、楽しかったなーとかも思ったり。
さっき言った10年間仕事いただいた人に、第一印象が悪い、口が悪いって言われて、そうだなっていう反面ちょっと傷つくっていうか。
で、考えるわけですよ。どういうことなんだろう。
たぶん彼はビジネスマンだから、もう出世する人なの。
そこを大事にしてるんだろうなって、そこって第一印象と口が悪くない、口当たりがいいってこと。
そうしないと組織で上に行けないからね。
じゃあ僕は何やってんだろうって考えると、やっぱり第一印象とか口当たりがいいっていうか、そういうのを拒絶してるのかもしれない。
それって中身の話じゃないんじゃないのかなっていうか、第一印象が良くて口も悪くなくて中身が話ができるのが理想だけど、たぶんそっちよりもやっぱりちゃんと中身の話っていうか、本当の話。
オブラートの話じゃなくてストレートな話っていうか、そういうのを心がけてると、やっぱり印象が悪く感じたり口が悪く感じたりする人は多いんだけど、僕は大事にしてるのはそこじゃないんじゃないかなと思って。
例えば人って一生で一度しか会えないかもしれないし、10回会うかもしれないしもっとかもしれないけど、やっぱその一期一会じゃないけど、その人と一生で一度、30分、1時間っていう中で、本当の話がしたいんだと思うんだよね。
だから印象がどうだとか口当たりがいいとか、そんなこと気にしてる時間がもったいないなと思うんだよね。
じゃあもう単刀直入に話をしていこうと。
そうですね、単刀直入、素直ですよね、思ったことをもうパッとおっしゃるから。
私が前住んでたおうちあるじゃないですか、お店になる前のコンクリートの。
そこですごい失礼なことを、隣にいた人が「安東さん、また失礼なこと言って」って言ってて。
その数日後に安東さんが「あんなこと言って悪かったな、ごめんなさい」って。
でも私はその時は「素直な人だな」って。
それをどうこう言われたっていうよりも、そういう表現で私たちの生活をそういう風に感じたんだなって思ったんですよね。
今ってみんないい人、みんななんか当たり障りなくて、無印良品とかユニクロみたいな人が多いじゃないですか。
じゃあたぶんつまんないんです。
だから、こういう大人がいるっていうことがとっても大事なんですよ。
40年ギャラリーをやってきて
40年ギャラリーをやってきたけど、2023年の5月に卒業。大変だったから。
もう何が大変かっていうと、自分の40年のギャラリーの話を考えると、いい展覧会をしてきた、チカさんもそう思うでしょ?いつも褒めてくれるじゃん。
うん、素晴らしい素晴らしい。
本当にいい展覧会をして魅せることはできたんだけど、売ることができなかったなっていうのが、自分の40年のギャラリーの総括なのかな。
でもあの町にあの場所・あの空間が、もう丸八倉庫(ギャラリーが集まったビル)もなくなったじゃないですか、途中から。
うん、ギャラリーコンプレックスね。
あそこにあの場所があることは結構希望の光っていうか。
いつも言ってたもんね。
あの福岡のスリービーポッターズで展覧会をして、2人でトークをしたっていう。
そこで一生懸命自分の話を僕は自分でしたと思うんだけど、皆さん僕のこと知らないと思うのでっていうので、一生懸命話をしたんですよ。
そしたら「安東さん、話をしない方がいいですよ、みんな分かってるので」って怒られて、「喋りすぎない方がいいですよ」って!
やってることがめちゃくちゃかっこいいから、もう作ってるものもかっこいいし、ギャラリーもすごいかっこいいから、ずっとそのまま夢見させてほしい。
どうしてそうなったのか僕も分からないけど、仕事はクールなんですよ。
例えばギャラリーもプロダクトもプロデュースも、全てクールでかっこいいんです。自分で言うのもなんだけど。
だけど人間はベタなんです。
だからこのギャップ、自分でギャップというのもあれだけど(笑)、もう全く別物として考えた方がいいと思うところがあって。
本当にこの人間であれはないし、あれ見てこの人間は想像つかないんですよね。
それでちょっと1つだけ言わせてもらうと、さっきの福岡のイベントの後に「安東さん、あんまり自分のことを語らなくてもみんな分かってるんでいいんです」って言った時に、僕はこう言ったんですよ。
「喋りすぎると、確かにこう相手のこと考えるとよくない効果になるんだけど、僕、効果を考えてないんだよ」
言ってた、「俺は喋りたいだけなんだ!』って(笑)。
喋ると楽しくなってくるから、確かに効果的にはもうちょっとセーブした方がいいとか、あるのかもしれないけど、もう喋るのが楽しい。
いいと思います。
それで歩み寄るのが安東孝一ではないから、「そうだよな」とか言って「俺、じゃあ明日からちょっと控えるわ」って言ってたら、だんだんこう背中の丸まったおじいちゃんになっちゃうから。
いやいや俺、その都度、傷は付いてるから。
すいません、傷つけて!失礼ですよね〜私。
でも「あ、いやいや、俺ただ喋りたいだけだから!」ってその時言われたんですよね。すごいな〜と思って。
だから、安東さんは安東さんのままでこれからも突っ走ってほしい。
僕もう来年70歳になるから。
もう今さら変えられないし、このままで行きます。
お願いします。あと、健康で。
そろそろお時間になりましたけど、今後のビッグニュース、展望などありますか?
やっぱギャラリー卒業して何するの?ってみんなに言われて、今、清隅白河のギャラリーからも歩いて100mぐらいのところにシェアオフィス3社で入って、倉庫改装して、そこでちっちゃな事務所で、アート・建築・デザインのプロデュースを90歳までやります。
そん中でも、インテリアとかランドスケープとか照明とかデザインプロデュース的なことと、あとオリジナルプロダクトでカレンダー作って、グラス作って、今年ダイアリーで。
実は、ジャスパー・モリソンに「皿を作ってください」ってメールをついさっき送ったら、「That’s Great Idea!I will do.」ということでやっていただけることになったので、いつまたデザインが出てくるかは分からないけど、それはすごく楽しみです。
実は去年に長崎の波佐見の窯屋さんところに、どうしても作ってもらいたい窯屋さんがあったんで、そこにアポ取って会いに行って初めて行くんだけど、一生懸命今までのカレンダー、グラスの話をして、ジャスパーがOK出たら作ってくださいってお願いしたら、作りますって言っていただいてるんで。
アンドーズグラスの話になると、やっぱり世界最高のジャスパー・モリソンというデザイナーと、松徳硝子の職人が1個1個吹いてるわけで、機械じゃなくて。
やっぱりこの薄いグラスの技術も、世界最高峰なんですよね。
だから、やっぱりクラフトマンとデザイナーとのコラボっていうので、うまくいったと思ってるので、今度はジャスパーと波佐見の職人とのコラボを実現して、いいもの作りたいな。
楽しみですね〜。楽しみにしております。
嫌なとこが1つもない手帳
最後に、ダイアリーの話をもう一度してもいいですか。
私、感想を述べれるほどあれなんですけど、楽しみにしてました!
もう1年半前とか2年ぐらい前から出すから出すからって言ってて、ようやく出た!と思って。
それで、どう?ってもう僕は必ず聞くから、「どう?」って言ったら、「いや、嫌なとこが1つもなくて」っていうから、僕、口が悪いから「え!それっていいとこないってこと?」ってわざと聞いたら、「いやいや、そういうことじゃなくて」って。
はい、そうなんですよ。
大体、これいらないな、これいらないなって思うんですよね、手帳買った時に。
でも今回そういうのがなくて、でもあんまりうまくそれしか今感想がなくって、使ってみないとやっぱりわからないと思っていて。
私、結構”書く派”なんですね。
娘は安東さんが手帳出したから一緒に別の色持たない?って言ったら、「え。なんで持つの?」って言われたの。
「なんでそんな便利じゃないものわざわざ書いて。Googleカレンダーあるじゃん」って。
びっくりして、その感覚。
それで、私にとって手帳ってなんだろう?と思って、書くこととか。
もうどんどんペーパーレスになってる時代じゃないですか。
物というのが存在すること自体、本もそうだけどダイアリーもそうですよね。
エコの観点とか色々やっぱプロダクトお作りになるから、そういうことも意識されると思うんですけど、じゃあなぜそこまでして物が欲しくなる?使いたくなるのかって考えた時に、私にとって手帳って”お友達”だなと思ったんですよね。
自分と対話するためのもう1つの人間像というか。
だからまだ感想を言えないのは、最近友達になったから、まだ仲良くなってないと思う。
まだ書いてないもんね(笑)。
仲良くなれるかどうかが、1年後になってまた安東さんに報告しますねって今日言いたかったの。
たぶんいろんなことが書き込まれてって、私とこのぐらい仲良くなったよって、来年もお友達続けられるかな、みたいな感じかなっていう。
だから、来年報告します。
僕は40年この仕事やってるからだけど、やっぱりデザインって言うと、なんか形がいいねとか色がいいねとか、表現っていうことで。
ヒガシチカさんも僕はデザイナー、表現者だと思うから、表現者の人が表現してないからいいねっていうのは、ひがしちかさんだから言えることだなと思って。
これはなかなかレベルの高い、いや分かって意地悪質問してるだけで やっぱいつも言ってるようにダメなデザイナーって表現しすぎちゃうわけですよ。
なんとか、僕ここにいるよとか私ここにいるよっていうのを、そういう職能だから。
だけどやっぱ葛西さんのデザインしたカレンダーとダイアリーは、やっぱ葛西さんは、ということだと思うんだけど、自分の表現ということでデザインしてないっていうか、もっと違う次元で考えてるのかな。
デザインしてるんですよ、いっぱいしてるのに、嫌なとこを感じさせないデザインをしてるっていうか、そこのギリギリのとこを本人も分かってやってると思うんで、やっぱ葛西さんって本当にすごいなと思って。
自分のインタビューを読んだら、葛西さんへのラブレターだった
今日ね、葛西薫さんお会いしたことないんですけど、もちろんどういう方か知ってるけど、どんな人ですか?っていうのも聞いてみたかったです。
葛西さんはいい人。
この間の話が、クラスカの取材が終わった後「僕は葛西さんといる時が、楽しい!」って言ったね。
僕69歳、葛西さん74歳だよ。
変でしょ。
だって、30年ぐらい付き合いしてて、このいい年いい大人が、僕、葛西さんといる時は楽しい!って話をして(笑)。
クラスカで実は僕だけの単独のインタビューと3人のと2個出てるんだけど、1個目の僕の単独インタビューを読んだ時に、葛西さんからショートメールをいただいて、すごくいいって言って褒めてくれて、すごい喜んでくれて。
ショートメール読んでふっと思ったのは、なんか僕は自分の40年を語ってるのに、まるで葛西さんへのラブレターかなって、こう思えてきて。
その次の3人でやったやつも、葛西さんのラブレター2になってるなと思って。
これも本当難しいんだけど、僕は葛西さんとはブックデザインもしてもらったり、サイン計画もしたり、商品開発もしたりして。
そうですね、ギャラリーのロゴも。
そう、2008年のギャラリーも、ギャラリーのDMとか、全てのCI(Corporate Identity)全部やってもらってて。
そうすると葛西さんのこと、うまく言えないんだけど、僕的には自分の感性がどこまでが僕なのか、どこまで葛西さんの感性なのか、もう今は分からない。
例えばここにカレンダーとダイアリーがあって、実際手を動かしてるのは葛西さんなんだけど、このパッケージもそうだけど、だけどディレクションしたのは僕なわけじゃない?
どこまでが自分なのか、どこまでが葛西さんなのか、本当にもう分からない。
分からないっていうのは僕の葛西さんへの、具体的には言えないけど、もう本当に分かんなくなってきちゃった。
とってもいいお話を聞けた気がします。ありがとうございます。
私、葛西さんのあの「ヒロシマ・アピールズ」のポスター、葛西さんって知らずにすごいかっこいいポスターだなと思って。
自分で描いてるからね。
そうなんですよ、それでびっくりしたんです、私。
何年か経ってから買えるんだって分かって買ったんですよ。
買った時にずっと眺めてて、この絵、誰が描いたんだろうって思って。
普通、アートディレクターだとイラストレーターに描いてもらうからね。
あれがもう、グラフィックデザインで感動するってこういうことだなって、初めての体験でした。
長野への移住に私の意思は何にもなかった
はい、今日はいいお話が、本当にたくさん、
あ、待って!聞きたいことがあって。
清澄白河10年ぐらいやってた?お店。
なんで長野県茅野に家とアトリエを構えることになったのかなぁ?っていう。
もうこれはすっごい簡単な答えなんですよ。
なんで、とかないんですよ。
結婚した主人が、行こうって言ったからなんです。
私の意志は何にもないんですよ。
行こうって?
移住しない?って言われて。
旦那さんがこの場所見つけたの?
何も自分の意思はなくて。
というのはもうちょっとお話すると、とっても自分の意見を言わない人なんですね。
(その彼が)どうしてもやってみたいことがあるって、あの山の近くに住みたいって言ったんです。
この人の1個ぐらい願いを聞いてあげないとって、偉そうですよね(笑)。
ちかさん、もう好き勝手なことやってるからな。
あんまり自分の願望言わない人が言うってよっぽどのことだから。
でもあの時はもうお店3つぐらいやってたよね、なのに?
仕事はどこでもできるなと思ったんですよ、自分の仕事は。
場所はこれからの時代関係ないなーと思ってたので。
というかあんまり考えてないですね、移住とかに関して。
アトリエはもう後付けでだんだんできてきたって感じなので、移住に関しては何にも。
あともう1つ質問は、すごく人気があって売れててファンもいっぱいいたコシラエルを、思いっきりやめちゃうと。
今もう物販してないよね。
あれだけ精力的にやってたのを、どういう吹っ切りなのかな?
もったいないとは自分でも思います。
あと「ぜひもう1度作ってください」って、そのあとお手紙とかいろんな方に、今でも本当に温かいお手紙いっぱいいただいたりして、それを振り切ってまでっていうのは大きく2つ。
この1年分析してみると、やっぱり子供との時間、この自然の中での時間を、自分の人生に限りがあるから、そっちにもうちょっと時間を費やしたいっていうのと。
やっぱりやっててすごく愛してるし楽しいけど、経営っていうのはすごく大変ですね。
2回ハゲましたもん!笑
僕もギャラリー、40年もそれやってたもん。
だから本当に、その2つが大きいかな。
いろんなきっかけとか要因とかはあるけど、やっぱり自分の残された人生、何に使いたいかなって思うと。
それと今からの時代、物をどんどん…、環境のことか。
でもギャラリーやっててもその環境指数で言うと、そのものの輸送とかやっぱりCO2の話とかになっちゃうけど、そこら辺をもう1回立ち止まって考えないといけないなっていうのを思ったりしています。正直な話。
そんな感じですかね。
本当に初めて来たけど、いいとこだよね。
ここ散歩するだけでもう最高なんですよ。
そんな感じでどうですか。終わっていいですか?(笑)
よろしくお願いします。
何時間喋ったの?2時間?
1時間ぐらい。じゃあ締めます。
ありがとうございました。
本日のゲストはアンドーギャラリーの安東孝一さんでした。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
アンドーダイアリーをプレゼント
リスナーの皆様に安東さんからアンドーダイアリープレゼントをいただきました。
番組のお便りを頂いた方から抽選で4名の方へ差し上げます。
紺と赤、どちらの色がいいかもぜひお書き添えください。
締め切りは、11/15とさせていただきます。
お便りはこちらからお寄せください。
安東 孝一(あんどう・こういち)
プロデューサー。
1954年宮城県生まれ。1984年にアンドーギャラリー設立。アート・建築・デザインのプロデュースを行う。
主なプロデュースにHareza池袋のアートワーク、慶應義塾大学日吉記念館のサイン計画、100%ChocolateCafe.のインテリアデザイン・グラフィックデザイン、中野セントラルパークのロゴデザイン・サイン計画などがある。
オリジナルプロダクトにANDOGALLERYCALENDAR、ANDO’SGLASS、ANDOGALLERYDIARYがある。『MODERN』『NEW BLOOD』『くうかん』『インタビュー』など著書多数。
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アンドーダイアリーが買えるお店
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